大切な方でした

先日、一本の電話がカルチャー教室から入りました。

通信講座を受講されている方が亡くなったというご連絡を頂きました。
先日受講生のみなさんへお渡しした、「いろいろ通信」でも通信講座のコーナーでご紹介させていただいた方で、熊本在住のSさん。
91歳でした。
Sさんとの出会いは、3年前。
Sさんが、88歳のときにお孫さんからのご紹介で、通信講座を受講されたのがきっかけでした。
当初から、熱心で、そして、いつも前向きで、力強いタッチで描き、
さらに、謙虚なお気持ちをもたれて、素晴らしい人生の大先輩でした。
88歳になって何かを新しく取り組めるなんて素晴らしい!
いつも通信講座の提出に加えて、ちょっとしたエピソードも添えてくださいました。

私は、Sさんの絵を拝見するのがいつも楽しみでした。
「たくさん、塗り過ぎですね。汚くなってしまいました。」
「触りすぎですね、もっと勉強します」
いつも頂くのは、反省の言葉とさらにもっと勉強するという意欲をいつも記されておられました。

時として、ご本人が入院されたり、その間、ご主人を送られたり、
さらに、熊本の震災に遭ったという大変な時期もありました。
毎月、体調やその暮らしをお伝えいただいていました。
最近は、昔、大阪の洋品店に仕入れに行かれたというエピソードも
時を越えて、懐かしむようにお手紙を頂いていました。
「~せう(しょう)」などといった、旧かな文字使いや難しい漢字で書かれておられるので
なかなか読めなかったりしていましたが
毎回楽しみに拝読し、お手紙を添えていました。

そんな折に、この悲しいおしらせが飛び込んできました。
私は、お会いしたり、お声も聞いたことがない方なのですが、
とても辛かったです。
私の受講生の最高齢で、そして、素晴らしい絵を描かれておられて。

そして、絵というのは、そんな単純なものでないと
改めて気がつかされました。
「これは、その方の『こころ』なんだ」と。

上手に描きたいと誰しも思いますよね。
通信講座は、特に難しいと思います。
ノウハウが文字だけでは、届き辛い場面もあります。

だからこそ通信講座では、その絵を描かれる方の背景を知って、
少しでも楽しく描いてもらうために、どんなアドバイスが自分にはできるだろうか。
常に思っていました。
通信では、手紙や文字のやりとりだけなので
それが、より研ぎ澄まされて、
相手の方に、すこしでも喜んでもらえるようにと考えていたんだと
気がつきました。
一生懸命描いた大切な、大切な絵です。
それにお応えできるようにと精一杯します。

絵ではなく『こころ』の通信だったんだ。
そう、気付かされました。
生きている絵。
キレイだけではない絵。

この出会いをつないでいただいたお孫さんやご家族の皆様
ありがとうございました。
私はSさんのように、強く柔軟に暮らしていける自信はありませんが
大先輩を見習って、謙虚に、そして生涯勉強したいと思っています。
Sさんに届く年までには、まだまだありますよね。
頑張ります。
見ていてくださいね。

1711Ssan
Sさん9月の作品
ありがとうございました。

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